アメリカン・ヒストリーX
「兄さん、僕たちの物語は憎しみの歴史にピリオドを打てるだろうか。」
父親が黒人に殺されたことをきっかけにして白人至上主義に走った兄、デレク(エドワード・ノートン)と、その兄を尊敬する弟、ダニー(エドワード・ファーロング)が辿るまさに悲劇の物語。ラスト・シーンは涙なくしては観られない、そんな作品に仕上がっている。マジで泣きました、あたしは。
黒人に対する憎しみから殺人を犯して刑務所に入れられたデレクの意志を継ぐように白人至上主義の運動に身を投じるダニー。しかし、出所したデレクはこの運動に否定的に考えが変わっている。困惑するダニーに刑務所での体験を話して聞かせるデレク。そして迎える衝撃のラスト・・・。
あたしは作品中の、「怒りは君を幸せにしたか?」 というセリフが大好き。これは、デレクが刑務所の中で、さまざまな現実に打ちのめされているときに彼に面会に来たかつての恩師、スウィーニーがデレクに向かって言ったセリフなんだけど、この言葉、とっても心に染みこんできた。
というのも、あたしは10代の頃、いつもイライラ、ピリピリしていて、いつも何かに怒っていて、いつも誰かを傷つけずにはいられなかった。でも、その度に疲れきって、決して幸せな気持ちにはなれなかった。そして、幸せになれないことは分ってはいるんだけど、それでも"怒り"をぶちまけることを止められなかった。
しかし、21のとき、ある理由でしばらく外の世界と遮断された環境、ある意味時間が止まっている世界で過ごすことになった。そのときは正直"死"というものも意識したし、そんな中で今の自分のこと、将来のこと、そして周りの世界のことをゆっくりと考えていたら、「そんなにピリピリしててもしょうがね〜な〜。」、なんて思い至るようになって(モチロン、ここに至るまでに様々な葛藤があったのはいうまでもない)、それ以来理不尽な"怒り"を外にぶちまけるようなことはなくなった。かつてのあたしを知っている友人たちはこの変わりように結構驚いていたけど。
で、このセリフだけど、なんか昔の自分に向けられた言葉のように思えて、「そうそう、そうなんだよ!」と、深く共感することができたんだ。
現実の社会で生活していると、ときには理不尽な状況に押し込められることがあるだろうし、ときには闘わなければならないこともあるだろう。でも、そんなときはこのセリフをかみしめて、単なる"怒り"をぶちまけるのではなく、その"怒り"を上手く昇華させて生きていければ、と思う。
あたしの2000年のベスト1ムービーであるこの作品、単なる"怒り"や"憎しみ"からは何も生まれないというメッセージが痛いほどに伝わってきて、衝撃のラストも含めて何度観ても涙を抑えることができないし、厳粛な気持ちになる。
ちなみに、エドワード・ノートンはこの作品のために肉体改造をしたみたいで、かなりの筋肉マン状態。そして、重厚な演技は相変わらずで、圧倒されっぱなし。そして、エドワード・ファーロングも「T2」での子供じみた雰囲気はどこへやら、見事な演技を見せてくれている。でも、日本のような国ではこうした人種差別をテーマにした作品は作れないだろうな。