穴
「大切なものは中においてきた。」
名門パブリック・スクールの4人の生徒が、行方不明となった。2週間後、薄汚れ、憔悴しきった女子高生リズがひとりだけ発見される。彼らは課外授業をサボるため、学校の敷地内にある森の地下室へと入ったらしいのだが・・・。一体"穴"の中で何が起こったのか?
物語は最初ただひとり発見されたリズの回想という形でまず進むのだが、その回想と"穴"には入らなかった友人のフランキーの言い分が食い違っていることから、この事件の真相が何なのか、俄然サスペンス・タッチを帯びてくる。
そこに表現されるのは、極限状態に追い込まれた人間の欲望、嫉妬、醜悪さ、そして恐怖と言いたいところだが、いかんせん、サスペンスの部分に重きを置いて観てしまうと、正直ありがちというか、演出に関してはさほどの怖さ、意外性を感じることはない。予告編を観て、どのような"恐怖"が描かれるのか、かなりの期待をしていただけに、些か肩透かしという感は否めない(具体的に書くとネタバレになってしまうのでこれ以上書けないけど)。
しかし、リズを演じるソーラ・バーチの演技に関しては、素晴らしいと言い切ってしまっていいだけのものを観せてくれる。オープニングのボロボロの状態で登場するシーン、"穴"の中で極限状態になって鼻水たらして泣き叫ぶシーン、まさしく"体当たり"でいわば汚れ役に挑んでいる。また、回想するときの何だか不思議な視線と表情や、ラストで見せるなんとも冷めた微笑みなど(表情は笑みなんだけど、目が笑ってないんだよね〜。一瞬ゾクッとしちゃった)、それらがかなりのリアリティを持って伝わってくるから、彼女の演技に引き込まれてしまう。極めて乱暴な言い方をしてしまうと、内容的には今イチでも、彼女の演技を観るためだけに観ても決して損はしないんじゃないか、そんな気がする(ということは、もし彼女が主演じゃなかったら・・・。考えるだけで怖い(笑))。「アメリカン・ビューティー」 や「ゴーストワールド」 での彼女も良かったけど、ここでもさらにパワーアップした演技が堪能できる。決して好みのタイプの女優ではないけど、今後がますます楽しみな女優だ。