イン・ザ・ベッドルーム
「本当に大切に思っている人を失った時、私たちは平静ではいられない。
その時、自分は何をしたらいいのか、何ができるのか・・・。」
ニューイングランド、メイン州の小さな町。マット・ファウラーは開業医で、妻ルースは合唱隊の教師をしている。夏休みで帰省している一人息子のフランクは、幼い2人の子供がいる年上の女性ナタリーと愛し合っている。しかし、彼女とよりを戻したい夫リチャードは離婚に応じず、度々彼女の家にやって来る。そして、短い夏が終わりに近づいた頃、彼らは思いもよらぬ悲劇に見舞われる―。
愛する息子を奪われたとき、ファウラー夫妻が選んだのはあまりにも衝撃的な結末だった・・・。
今年度のアカデミー賞にも5部門でノミネートされた話題作。話の筋は決して派手ではなく、地味というか、淡々。特に前半は、アメリカのどこにでもあるごく普通の家庭、家族の姿が描かれる。しかし、後半は・・・。そう、フランクを襲う不幸がなければ・・・。そこからは息子を失った夫婦の喪失の痛み、悲しみを、トム・ウィルキンソンとシシー・スペイセクの抑制の効いた重厚な演技で観せてくれる。作品自体、非常に重いテーマなんだけど、彼らの素晴らしい演技を堪能するだけでも一見の価値があるだろう。
それにしても、アメリカという国は怖い。フランクの死の真相が殺人なのか、事故なのか、その真相は映画の中では明らかにはされないけれど(だって目撃者がいないんだから)、仮にも人を殺めた人間を保釈金を積めば釈放しちゃうんだから・・・。そんな自分の息子を殺した人間と町中(小さな町だし)でバッタリ出会ってしまったら・・・。考えただけでもゾッとして、ルースの心情を推し量ると言葉が出ない。
でも、同じ痛みを負っているはずのこの夫婦の胸の内はお互い違う。そしてその溝が明らかになり、お互いの気持ちをぶつけ合った後にあらためて固い絆で結ばれるものの、この後に描かれるのは決して単純な夫婦の"再生"の物語ではない。ここでサスペンス的な要素を加えることで、作品にメリハリを付けようという事か。もっとも、彼らが選ぶ手段というのが、↑の粗筋で書いたような"衝撃的"なものであったかというと、あたしにとっては意外でも衝撃的でもなかったけど。だって、実際に行動に起こすかどうかは別にして、悲劇に襲われて、しかも町中でその張本人に会っちゃうんだよ。そしたら、そういう気持ちになることってあるでしょ。だから、ここまできたら、最後に残された取るべき手段はこれしかない!って思えたんだ。だけど、彼らはこれからフランクの死だけでなく、このことをも背負って生きていかなければならないんだよな〜。そう思わせるラストのベッドルームでのふたりの会話シーンを観てしまうと、心が痛む。