甘い嘘
「疑わないで、愛してるから。」
ジャンは作家としての成功を夢見て、ミシェルは彼の夢の実現のために影から支える。ふたりはどこから見ても、幸せに包まれた理想的なカップルだった。ところが、まるで宝くじに当たったかのように真正面に構える豪邸が自分たちのものになったとき、これまで何にもまして強靭だったはずのふたりの愛が、次第に揺らぎ始めてしまう。はたして、真実の愛は存在するのだろうか?
舞台はパリ、モンマルトル。つつましやかながらも幸せに暮らしていた夫婦に訪れた大富豪の豪邸の相続という思ってもいなかった出来事。一見さらなる幸せが彼らに訪れるかと思いきや、実はこれは亡き大富豪の気まぐれなゲーム。次々と現れる愛の疑惑。その愛の疑惑に直面したふたりが愛を貫けるのか。この作品は、色々な謎を孕んだサスペンスであり、ひとつの愛の形を描いたラブ・ストーリーでもある。そして、このふたつの要素が絶妙に絡み合った優れた作品に仕上がっている。
出演者も、妻への疑惑に悶々とし、それでも妻を信じたい気持ちとの間の葛藤に壊れそうになるジャンを好演するジャン=ユーグ・アングラード(この人、昔から全然変わらんね〜)、夫の疑惑を知りつつも、それを釈明せずにとにかく「信じて欲しい。」と言い切るミシェルをナイーブに演じるクロチルド・チロー(「赤ずきんの森」 のときにはさして印象に残っていないけど、ここではかなり化けたみたいで、存在感がある)、なんとも不気味なメイドをホントに不気味に演じるクリスティーヌ・ボワッソンと、それぞれ見事な演技を見せていて、そのことが作品の質の高さを保つのに貢献しているといっていいだろう。
ラストですべての真相が明らかになった後のふたりの姿に、彼らはすべての試練を超え、"真実の愛"に辿り着いたと信じたい。そう、愛なんて、という大富豪の目論みは見事にはずれ、"真実の愛"はすべてを超越するのだと・・・。でも、もしあたしがジャンの立場だったら、彼らのような境地に辿り着けたかまったく自信ないけど(苦笑)。