es〜エス〜
「被験者求む。」
始まりは大学心理学部が出した、ある実験の被験者を求める小さな新聞広告だった。その実験とは、被験者を無作為に「看守役」と「囚人役」に分け、監視カメラ付きの模擬刑務所に収容する。そして2週間、いくつかのルールに従いながら自分の役を演じること、それが彼等に与えられた仕事だった。報酬は4,000マルク。簡単なアルバイトだと被験者の誰もが考え、実験を行なう教授たちもまた、実験が持つ重大な意味に気付いていなかった。しかし、実験開始直後から、彼らの予想はことごとく裏切られる。凶暴化する「看守役」、卑屈になっていく「囚人役」。ごく常識的な人格の持ち主だった被験者たちは、次々と「もうひとつの人格」へと変貌を遂げ、擬似刑務所は制御不能な状態に。そして遂に教授たちは驚愕の真実を目撃することになる・・・。
1971年にアメリカのスタンフォード大学心理学部で実際に行なわれた実験を基にして作られた作品。ちなみに当初2週間の予定だったこの実験は、わずか7日で中止。現在この実験は禁止されているという。
ある特定の状況に置かれた人間が、変貌していく様、今回は特に人間の持つ心の闇の部分、残虐性、そして狂気があからさまになっていく過程にゾクリとする。この"状況の力"というものによって、人間なんて簡単にコントロールされてしまうのだ。あたしは普段から"人間性悪説"を唱えている人間なんだけど、やっぱり人間の剥き出しの本能はこうした残虐性。そうしたものは生きていく過程で学習することによって、矛を収めるように覆い隠されていく。だけど、ほんのちょっとしたきっかけで一気に噴出してしまう。そんな人間の脆さ、弱さ、醜さ、おぞましさが剥き出しにされるこの作品、特に後半部分からエスカレートしていく状況には、心拍数が一気に上がり、不快なのに、おぞましいのに、目をそらしたいのに、それでも目が離せずスクリーンに釘付けになっていた。やっぱり人間って怖い。
果たして自分があのような状況に追い込まれたときに、正気を保っていることができるのだろうか?一瞬そんな疑問が頭をもたげてきたんだけど、きっと無理だろうな〜。真っ先に壊れてしまうんだろうな〜。所詮は弱い人間ですから(笑)。
それはさておき、タレク(囚人番号77)とドラのロマンスは蛇足じゃないかという気もしなくはないが、これがなければ単なる救いのない映画になってしまったかも知れないので不問に付すとして(笑)、観終わってドッと疲れちゃったけど暑い夏にはこういうゾクゾクくる心理スリラーがいいのかも(笑)。