オアシス

 「魂が求め合う」
 常識どおりに生きるのが苦手な心優しい青年ジョンドゥ。刑務所を出たばかりの彼は、脳性麻痺の女性コンジュと出会い心惹かれるものを感じる。ふさぎがちだった彼女もジョンドゥによって次第に心を開き、ふたりは自分たちの世界で純粋な愛を育んでいく。しかしそれを理解する者は誰もいなかった。そしてある時事件が起こる・・・。
 この作品については、鑑賞から1ヵ月半以上経過した今でも頭の中で上手い言葉が見つからず、上手く言葉にできない状態が続いている。それほどこの作品があたしに与えたインパクトが強烈だったということ。確かに最初はジョンドゥのあまりにも破天荒なキャラクターに多少退いてしまって、正直物語の中に素直に入り込むことができなかった。でも、物語が進むにつれ、彼の一見破天荒なキャラの中の純粋さに気付き、それと呼応するかのごとくコンジュのキャラも分かってきた途端に、一気に物語の中に引きずり込まれてしまった。これは理屈ではない、このふたりだからこそ結ばれる、それはなんとも自然で必然の行為。このふたりが愛しくて愛しくて、感動とか、そんな陳腐な言葉は使いたくない、まさに本能が反応して魂の奥底が揺さぶられてしまう、そんな印象を受けた。
 そんなふたりと正反対の周囲の無理解ぶり。ジョンドゥが刑務所に入っていた本当の理由が明らかになり、彼に対して後ろめたさを感じている兄弟の、彼がコンジュを連れてきたのも単なる嫌がらせだとしか考えられない矮小さ、一方、コンジュの世話をしているんだよという顔を装いながら、その実単に彼女を利用しているに過ぎない彼女の家族。事件(とは正直言いたくない。あれはまさに必然だから)が起きて、明け透けにものを言う警察。だけど、その周囲にあたしたちは心から憤ることができるのだろうか。これはすべてあたしたち大衆の姿。きっとあたし自身も彼らと同じような態度に出てしまうに違いない。綺麗ごとに終始するのではなく、それを包み隠さず提示するイ・チャンドン監督。これはあたしたち大衆の喉元に突きつけられた匕首のようなもの。
 しかし、そんな周囲のゴタゴタがあっても、このふたりには周囲に自分たちのことを説明する術がなくとも、ふたりの間の絆は決して途切れることがない、なんとも可愛らしく、そして美しいとさえ思える愛(途中で何度となく挿入されるコンジュの空想が、またなんともいいアクセントになっている)。ラスト近くで警察から脱走したジョンドゥがコンジュに対して見せる"魔法"。ここに込められたジョンドゥのあまりにも純粋無垢なその心の内に、溢れる涙を堪えることができなかった。
 そして、キラキラとした柔らかな日差しとともに示されるラストシーン。人生は決して甘いものではないと、一度は離れ離れになるふたりだけど、だけどきっと、いや間違いなく、また一緒になれる、そう確信してなんだか温かいものに包まれるような、満ち足りた気分になった。この愛しいふたりに幸あれ!

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