オー・ブラザー!
「だから、人生はおもしろい。」
1930年代のミシシッピー州の片田舎。エメット率いる3人の囚人は、秘密の場所に眠る宝物を手に入れるため、脱獄を敢行する。しかし、その旅路はハプニングの連続。個性豊かな面々との沢山の出会いと別れを繰り返しながら、彼らは本当の宝物に気がついていく・・・。
いや〜、なんとも爽快!そしてハッピーな気持ちになれる作品だ。どんな作品でも決してハズレのないコーエン兄弟久々の新作は、ホメロスの「オデュッセイア」を下敷きにした冒険物語だ。ここ数作ではちょっとした歯車の狂いから悪い方へ、悪い方へ転がっていく人間の醜さ、滑稽さ、可笑しさが描かれていたけど、今回はどちらかというと「赤ちゃん泥棒」 的な雰囲気。だから、「ファーゴ」 や「ビッグ・リボウスキ」、「ブラッドシンプル/ザ・スリラー」 的なものを期待してしまうと、「あれ!?」みたいな印象を持つかもしれない。でも、それは期待の仕方が違うというもの。だって、見るからにそんな作風の作品になりそうもないでしょ。
確かに冒険物語といってもハラハラドキドキがあるわけでもなく、意外性にも欠けるかもしれないし、目新しさもないかもしれない。しかし、そういったものがなくても最後まで飽きさせずに引っ張っていく構成力、これが素晴らしい。こういった描き方で退屈させないのって実は難しいんじゃないかな?モチロン、ところどころでクスリとさせられるエピソードがあるしね。それと、なんていうんだろ、全編を通してのホノボノさとでもいうのかな?それが感じられて、すごいホッとできるんだ。このような作品も撮れるコーエン兄弟の才能は素晴らしいと素直に感心できる。
また、登場するキャラクターの魅力的なこと。コーエン兄弟作品常連のジョン・タトゥーロやジョン・グッドマンは相変わらず期待通りの演技で、ある意味これくらいはできて当然だよな〜って感じなんだけど、ジョージ・クルーニーがこんな演技ができる人だとは思いませんでしたのよ。今回は2枚目半というか、思いっきり3枚目。あのルックスで3枚目って一歩間違えると思いっきり鼻に付くところだけど、それがそうならない。これは間違いなく彼の演技力の勝利だよね。口が達者でいつもヘアー・スタイルを気にしていて、寝るときはヘア・ネット着用なんて、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」 のあのクールさはどこへやら。しかも今回の脱獄の目的は、宝探しじゃなくて実は別れた女房子供との再会だっていうんだから(娘が6人という設定もGood。それと、ホリー・ハンター演じる元妻とのやり取りもなんとも微笑ましい)、巻き込まれたほかの2人はいい迷惑かも(^^)。いや〜、いい役者だ。
それから、作品全体に流れるブルーズを始めとするアメリカ南部のルーツ・ミュージック。これがまたいい。作品に上手く溶け込んで、雰囲気を盛り上げてくれる。この辺は音楽大好き人間のあたしにとってはかなりポイントが高いことだ。あ〜、あたしも"ずぶ濡れボーイズ" のレコードが欲しいよ(^^)。そういや3人組が道中で知り合う"悪魔に魂を売った"ギタリストって、舞台が1930年代のミシシッピー州だけに、間違いなくブルーズ・ギタリスト、ロバート・ジョンソンがモデルだよね。
ラストのオチも「そうきたか!」って感じで、ダムに隠したお宝の話がこのラストの伏線としてしっかり機能しているってことか。上手いね〜。コーエン兄弟、お見事!また観たいぞ。
余談ながら、前売り券のデザインには3種類あって、3枚揃えると右斜め上にあるようなデザインになるという遊び心、これまた最高!