アザーズ
「その"存在(アザーズ)"が見えた時、全てが変わる。」
1945年のイギリス。古い屋敷に暮らすグレースと2人の子供たち。子供たちは極度の光アレルギーで、屋敷のカーテンも閉じられたまま。ある日、グレースは働き口を求めて訪ねてきた3人を召使いとして雇うが、彼らが来て以来、屋敷では不可解な現象が起き始め、そして子供たちは"何者か"を目撃する・・・。
いや〜、ヤラレタ。完全にヤラレタ。今年(2001年)の東京国際映画祭で一足先に観ることができたのだけど、これが大当たり。「レクイエム・フォー・ドリーム」 以来、久々に全身に鳥肌が立ち、上映終了後もしばらく震えが止まらないくらいの衝撃作だ。
舞台は古い屋敷の中とその周辺のみ。主たる登場人物もグレースと2人の子供、そして召使の3人だけ(グレースの夫もほんの少しだけ登場するけど)という、ある意味閉ざされた空間の中で物語は進行していく。
この閉ざされた空間の中に感じられるなんとも鬱々とした空気、屋敷のカーテンが閉じられた状態ということで"光"が感じられない映像、そしてなんともいわく有りげで怪しげな3人の召使いと、間違いなく何かが起きると予感させる。でも、よくあるホラー映画のように血が飛び散ったり、死人が出たりという視覚に頼った恐怖があるわけではない。あるのは静かに背後からジワジワと忍び寄る心理的な恐怖感。この"静かなる恐怖"という感覚は、"あの"作品に近いかも。なんだか物語が進むにつれ心臓はバクバクいうし、ノドはカラカラ。"ゴシック・ホラー"の定義付けというのが今ひとつ分からないけれど、マジで怖い。一体子供たちが見た"存在"は何なのだろう?そして3人の召使いの正体は?という謎も相俟って、一気にクライマックスへと雪崩れ込む。
あとから考えると、グレースと一時的に屋敷に戻ってきた彼女の夫とのやり取りや、作品中に示される幾つかの小道具にこの謎を解くカギが隠されていたようにも思えるが、この作品は"謎解き"の映画ではないし、上映中はそんなことに気を配る余裕などなかった。それだけにクライマックスでは心拍数が一気に上がり、血の気がス〜っと引くような感覚に捉われてしまった。それともうひとつ、どういうわけか切ない気持ちも。ラスト近くでグレースにもその"存在"が見えた後に子供たちを抱きしめるシーンでは、不覚にも涙が出そうになってしまった。なんなんだろうこの感覚は?これは、グレースに対する感情移入の表れなんだろうか。だとすると、チョット線が細い気もするけど、子供たちを気丈に守ろうとするグレースを演じるニコール・キッドマン、いい演技をしていたということか。
アレハンドロ・アメナーバル監督の前作「オープン・ユア・アイズ」 も大変興味深い作品だったけど、これはそれを遥かに凌ぐ傑作!と断言してしまいたい作品だ。一般公開されたら是非もう一度観て、そして感じたい。
(追記)
結局今年(2002年)のGWに一般公開され、さっそく感じてきた。今回は細かい点をチェックしようと思っていたのに、次第に話に引き込まれてそれどころじゃなくなるわ、次の展開がどのようになるのか分かっているにもかかわらず、自然と興奮して震えてくる自分がいるわ、ラストはやっぱり泣けてくるわで大変だった(笑)。この作品は、オチがどうとかいう低レベルの次元で語られるべき作品ではなく、ラストに至るまでの過程もすべて包括的に捉えて語るべき作品なんだと思う。それと、"ホラー"と十把一絡げに捉えるのは勿体ない、"家族愛"の物語でもあると思うんですけどどうでしょ?そうした見地からみても、構成、キャスティング、カメラワークと、すべてがほぼ完璧に近い作品であり、ネタバレしてても十分に楽しめる、やはり傑作!と断言できる作品であるのは間違いない。というわけで、去年より評価を上げて、☆☆☆☆☆に。