ビューティフル・マインド

 「それは−真実をみつめる勇気 信じ続けるひたむきな心」
 物語は、1947年秋、ジョン・ナッシュがプリンストン大学の大学院に到着するところから始まる。すべてを支配する真理、真に独創的な着想をみつけたいと、数学の研究に没頭する彼は、ときに変人にも見えた。友だちはルームメートのチャールズだけ。方程式で占められた頭に、遊びや恋の入る余地はなく、いつも研究への焦燥感でいっぱいだった。だが、数年後、彼は新しい理論に到達し、アメリカ数学界の若きスターになった。しかし、そんな彼の才能に、国防省の諜報員パーチャーが目をつけた。それからは、あるトップ・シークレットをめぐり、ナッシュの周囲にあやしげな人影が出没し始める。やがてその人影は、ナッシュの心の影にもなっていく・・・。
 今年度のアカデミー賞作品賞受賞作品。あたしはラッセル・クロウ主演の、実在の数学者のドラマという情報のみで、それ以外は事前になんの情報も仕入れずに劇場へ足を運んだのだけど、アカデミー賞に相応しいだけの見応えあるドラマが展開される。
 研究に没頭するあまり、周囲と溶け込めず、徐々に精神の均衡を崩していきながらも、最後はそれと真っ直ぐに向き合い、献身的な妻の愛、周囲の理解に支えられ、ナッシュがノーベル賞を受賞するまでのドラマが、実に抑えたトーンながらも味わい深く、そして観る者の心にしっかりと訴えながら繰り広げられる。確かに実話を基にしているとはいえ、映画のために脚色された部分もあるんだろうけど、あたしはラスト近くのレストランのシーン(しっかりとこのシーンへの布石も打ってるんだよね〜)で、魂が揺さぶられ、涙が止まらなかった。
 そんな"ヒューマン・ドラマ"だけでなく、謎の諜報員パーチャー(パーチャーを演じるエド・ハリスがまたいいんだ)の登場が物語に奥行きを与え、サスペンス・タッチの雰囲気も醸し出していて飽きさせない。このパーチャーとナッシュのルームメイトのチャールズって、ある意味このドラマのカギを握っていたりして(どういう意味かはネタバレになるので触れません。気になる人は実際に映画観てくだされ)。で、チャールズを演じるポール・ベタニーが存在感抜群。「ROCK YOU!」 でのジェフリー・チョーサー役もインパクトあったけど、こちらでも彼の口八丁ぶりは健在。今後が楽しみな俳優のひとりだ。
 そして、何よりも素晴らしいのがジョン・ナッシュを演じるラッセル・クロウ。この人、今までも色々な役柄を演じてきたけれど、今回のナッシュのような役まで演じられるとは、その演技の幅の広さに感服だ。精神を病んでそれに押し潰されそうになるところなんて、もの凄くリアル。完全にあたしの心はナッシュと同化してしまったような気分を味わった。そしてその自らの病と折り合いをつけながらノーベル賞を受賞するまでの過程で、ああやって抑え目ながらも揺れ動く感情の起伏を表現できるって、とっても難しいことだと思うんだけど、それを見事に演じ切ってるのだからこれはもう、お見事!としか言いようがないでしょ。でも、先日プロモーションで来日したときの超むさ苦しい格好の彼とジョン・ナッシュを演じた彼とが同一人物だとは俄かには信じられんぞ(爆)。
 それから、そんなナッシュを支える妻アリシアを演じるジェニファー・コネリーもいい。「レクイエム・フォー・ドリーム」 でのとことん堕ちていく役柄とは対照的に、自身も内面では苦しみながらもナッシュを支え、献身的な愛を捧げる姿には素直に感動した。綺麗ごとかもしれないけど、やっぱ人生で大切なのは"愛"なんだよな〜。あたしみたいなひねくれ者がこんなこと言っても説得力ないかもしれないけれど。余談ながら、ふたりで星を眺めるシーンが印象的。

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