暗い日曜日
「死へ誘う、禁じられた旋律」
1930年代末、ブダペストに一軒のレストランがオープンした。レストランを支えるのは、オーナーのラズロと彼の若く美しい恋人イロナ。あるとき、ふたりは名も無きピアノ弾きアラディを店に雇い入れる。イロナとアラディはやがて惹かれ合うようになるが、三人が選んだのは、決別
ではなく、愛の共有だった。
イロナの誕生日、アラディはプレゼントの代わりに自作の曲"暗い日曜日"を捧げる。危ういほどに美しい旋律を持つその曲は、ラズロの力添えでレコード化され世界中で大ヒットを遂げるが、レコードを聴きながら自殺するものが後を絶たず、"自殺の聖歌"という烙印を押される・・・。
オープニングは現代。とあるレストランで老紳士の80歳の誕生日パーティーが催される。そこでその老紳士がリクエストした"暗い日曜日"が演奏されると、老紳士が急に苦しみ出して倒れる。そこから時間が遡り、"暗い日曜日"にまつわる1930年代〜のエピソードが描かれ、そして最後に現代に時間が戻るという構成。この構成が何を意味しているのかは実際に観て確かめてもらいたいんだけど、あたしはラストで「ナルホド!」と膝を打って感心。このような構成にしたことでエンターテインメント性にも富んだ秀作になったことは間違いないだろう。
そして、この作品中で描かれる"暗い日曜日"にまつわるストーリー(モチロン、フィクションだけど)というのが、また面白い。実話としても、この"暗い日曜日"を聴いて自殺者が相次いだというエピソードが示すとおり、なんともいえない暗鬱な雰囲気のこの楽曲に導かれるように繰り広げられるラズロ、イロナ、そしてアラディの三角関係。それも決してドロドロしたものでなく、愛と友情の微妙なバランスが保たれる関係。ここに1930〜40年代という時代背景、かつてのレストランの常連、ハンスがナチス将校となって彼らの前に姿を現すことからも分かるように、ナチスの台頭、ユダヤ人の迫害(ラスト近くで駅でラズロとハンスが対峙するシーンには、胸が締め付けられる思いが・・・)、戦争の足音という様々なファクターが見事に絡み合って、なんともいえない独特の雰囲気を醸し出している。この雰囲気というのが上手く言葉にできないんだけど、"暗い日曜日"の曲調にマッチしているような、そんな気がする。気がついたらこの作品、そしてこの曲の持つ不思議な力に絡め取られて、どっぷりハマり込んでいる自分がいた。
作品を観る前は、サスペンスとかミステリー・タッチの作品かな〜と思っていたんだけど、それだけではなく、それらの要素も持ち合わせた極上のラブ・ストーリー。そして主役は"暗い日曜日"そのもの。作品中で何度も繰り返され、エンディングでも流れるこの楽曲を聴くに連れ、身体がゾクゾクしてきて・・・。あ〜、サントラ欲しい!(もっとも、自殺したいとは思わないけどね(笑))