ギター弾きの恋

 「月まで届け。」
 ウディ・アレン監督の監督30本目にあたる作品。1930年代、ジャンゴ・ラインハルトに次ぐ"世界で2番目"を自称するギタリスト、エメット・レイは、天才でありながらも、自堕落な生活を送るダメ男。そんな彼が演奏先のニュージャージーで、口のきけない女性ハッティと出会い、愛し合うようになる。しかし、気まぐれな彼はハッティを捨て、上流階級出身のブランチと衝動的に結婚してしまう。やがてブランチとの愛も破局を迎え、エメットはハッティの元に戻るのだが・・・。
 それにしても、ウディ・アレン監督って、人物の描き方が絶妙だ。物語は、ウディ・アレン監督ほかの関係者(みんな実在の人物!?)の証言を間にはさむ形で進んでいくのだけど、モチロン、エメット・レイというのは架空の人物。この天才なのに自堕落なダメ男を、"ダメ男"を演らせたら右に出るものがいないかも、と密かに思っているショーン・ペンがユーモラスに演じている。かなりのハマリ役なんじゃないかな。ジャンゴ・ラインハルトと遭遇したときに緊張のあまり失神しちゃう、なんてエピソードも、その気持ちが分かるだけに思わずニヤリとしてしまった。また、ギターを弾くシーンもかなり練習したそうで、その割には、指と音が合っていないような気がしたという突っ込みは、この際しないことにしよう(^^;)。
 そして、なによりも素晴らしいのは、ハッティ役のサモンサ・モートン。口のきけない女性という難しい役柄を、豊かな表情、そして全身で見事に演じきっている。食べ物を口いっぱいにほおばって、口をモグモグさせてるところなんかも可愛らしい。ブランチ役のユマ・サーマンもいいけど(彼女は「宮廷料理人ヴァテール」のときの方がより綺麗だったな〜)、個人的にはやっぱりハッティが好きだな。
 ラストでようやく大切なものに気づいて、ハッティの元に戻ったエメットに突きつけられた厳しい現実。思わず心の中で「もう遅いんや!」(by明石家さんまではない(^^;))って叫んでしまって、なんだか胸がキュンとしてしまった。なんで男って(自分も含めて)、大切なものに気づくのがこんなにも遅いんだろう!?。
 なんとも微笑ましく、そして切ないストーリー。BGMに流れるご機嫌なジャズのナンバーとともに、多くの人に観てもらいたい作品だと思った。

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