ココニイルコト
「目をつむると、会える人がいる。」
相葉志乃は東京の広告代理店にコピーライターとして勤務していたが、やっと仕事を任されるようになってきた矢先に上司との不倫を理不尽に断ち切られ、会社の異動命令によって流されるように大阪にやって来る。これまで彼女は、幼い頃のつらい経験から、何かを願ったり信じたりすることを初めから諦めることで、傷つきやすい自分をかろうじて守ってきた。けれど、たまたま同僚となった前野悦朗という一風変わった青年との出会いによって、彼女は少しずつ変わっていく・・・。
最相葉月のエッセイ集「なんといふ空」収録の1200字余りのエッセイ「わが心の町
大阪君のこと」を原案として、それを巧妙に膨らませた清々しくも切ない、だけれども元気をもらえる極上のラブ・ストーリーだ。あたしはこの作品を観た翌日に書店に「なんといふ空」を買いに走ったぞ(笑)。
まず主演の真中瞳がいい。TVのバラエティ番組のイメージが強い彼女、だけどもともとは女優志望。確かに演技に関しては決して上手とはいえず、まだまだ訓練の余地はあるんだけど、それでもこのナイーブで諦念に絡め取られた主人公が次第に変わっていく様子をなんとも瑞々しい感性で演じているのが非常に好感が持てる。どんどん磨けばもしかしたら大化けするかもしれないよ。そういや彼女って、関西出身だったよね。そんな彼女が大阪を舞台にしつつも標準語を話さなければならないというシチュエーションがなんとも可笑しい(笑)。
それと前野悦朗を演じる堺雅人の、なんともほんわかとした演技も素晴らしい。傷ついた志乃に「ま、ええんとちゃいますか。」といつも微笑む悦朗。その彼の笑顔を見ているだけでこちらも優しい気持ちになれるような、そんな気がする。でも、そんな彼も実は重大な秘密を抱えていて、それであってもそれをおくびに出すことなく、いつも優しくのほほんんと接してくれるなんて、なんだか切ないな〜。風変わりだけど、なかなかあんないい男はいないぞ。
そんな悦朗との別れがあって(これは悲しいけど予想ができた)、その後彼のアパートを訪れた志乃が、昼間でもアパートから星が見える理由を理解するラスト、このセンスが絶品!
真中瞳と堺雅人の演技もさることながら、彼らの周りを固める芸達者たちも素晴らしく、こんな一瞬の出会いによっても人間は変わることができるんだ、やっぱり人との出会いは大切にしなきゃねと思わせられる邦画の傑作!と断言しませう。