この素晴らしき世界
「人は、どうしてこんなに可笑しく、哀しいのか。」
第二次世界大戦下、戦場から遠く離れたチェコの小さな町にもナチスの影がしのびよる。ある日、子宝に恵まれない夫婦ヨゼフとマリエは、収容所から逃げてきたユダヤ人青年ダヴィトを匿うことになる。この家に出入りするナチス信奉者のホルストはマリエに横恋慕していた。彼は隠し事をしているような夫婦の様子に疑いを持ち始め、彼らの運命は思わぬ方向へ―。
戦争に翻弄されながらも懸命に生きる市井の人々の姿を、人間に対する温かな視線で描き、しかも笑いと涙で包み込んでくれる傑作だ。ここに出てくる人たちは、ホントにどこにでもいる小市民的な人々。ヨゼフとマリエがダヴィトを匿ったのだって、別に思想的にどうこうというのではなく、家の中に入れちまったんだもん、今ここで彼を追い出したところで、誰かに見られたら結局お終いじゃん。今さら追い出せないよな〜。だったら匿うしかないよな〜という、半ば消極的な理由。ここから彼らのある意味死と隣り合わせの生活が始まるわけだけど、それをユーモアを交えて(この"ユーモア"というのがいちいちあたしのツボを突いていて、笑わずにはいられなかった)ほのぼのテイストで描きつつ、しかも人間臭さが伝わってくるような脚本が秀逸だ。
また、子宝に恵まれない彼らがついたほんの些細な嘘が、にっちもさっちも行かない状況になり、導き出された結論には「オイオイ!」って笑いながらツッコミを入れたくなるものの、あの切迫した時代を生き抜くためにはあれしか選択肢はないという、実は彼らの切実な思いが込められているのだと思うと、胸が痛くなったりして。しかも、この"妊娠"、"赤ん坊"というキーワードがラストに見事に活きてくるという構成もまた素晴らしい。そう、この赤ん坊はヨゼフ、マリエ、ダヴィト、そしてホルストの4人の子供なんだよ。それから、チェコが連合軍によりナチス支配から解放された後に、収容所でヨゼフがホルストをピックアップするシーン(「暗い日曜日」 でのラスト近くで駅でラズロとハンスが対峙するシーンを思い出したりして(結果は逆だけど))や、ホルストが赤ん坊を取り上げた後に(ちゃんとこのシーンへの布石も物語中の会話の中で打ってるんだよね!)、ダヴィトがホルストについて語るシーンなどには人間の持つ優しさ、寛容さが感じられる。
ラストは色々な感情がこみ上げてきて、涙ボロボロ。作品の性質とかは全然異なるものの、ある意味「ライフ・イズ・ビューティフル」 にも通ずるテイストを感じられるけど、個人的な嗜好を言ってしまうと、あたしは断然こちらの方が好きです。いや〜、素晴らしい!お見事!