メルシィ!人生
「プチハッピーお持ち帰り」
とりえといったらまじめなだけ、そんなつまらない人生を送っているピニョン。妻子にも見捨てられた彼に、さらに最悪の出来事が。それは20年も勤めた会社をクビになるという知らせ。思い余ったピニョンは、身投げしようとしたところを隣の部屋に引っ越してきた老人ベロンに救われた。優しい救世主は彼にとんでもないリストラ対策を提案する。翌日、会社はピニョンの噂でもちきり。あの目立たないピニョンがお知り丸出しのレザーパンツで男と抱き合っている写真が送られてきたのだ―。
フランシス・ヴェベール監督の前作「奇人たちの晩餐会」 がお気に入りだったから期待していたんだけど、これがまたクスリとさせられる上に皮肉と毒気が効いている(その皮肉と毒気を笑いで上手くくるんでいるというのがまた上手い)、後味爽やかで小粋なフレンチ・コメディだ。
リストラ回避のための窮余の一策というのが自分をゲイだと思わせちゃう!しかも、ピニョンの勤める会社がゴム工場で、主力商品がコンドームだったりするもので(この設定が秀逸!)、ゲイのピニョンをリストラなんかしちゃったら、顧客であるゲイ団体からクレームが・・・。などとそれを恐れてピニョンのクビを白紙に戻して右往左往する会社の上層部。これって一見ゲイを差別してないように見えて、その実差別してるってことなんだよ、ってゲイ差別に対する強烈な皮肉が感じられる。ベロンはゲイであるが故に会社をクビになり、ピニョンはゲイであるが故にクビを免れる。これって違うように見えて根っこの部分はおんなじ。「20年経っても世の中何にも変わってなどありゃせんよ。」とつぶやくベロンのセリフがまた痛い。
また、ホントはストレートなんだから、ゲイの演技などできないピニョンはいつもと変わらないのに、周囲の彼を見る目が変わってくる。ここでも、結局人間なんて、噂や外見だけで人を判断して、その人の真の姿など見ようとしないんだって皮肉がたっぷり効いている。
と、こう書くと、なにやら深刻っぽい印象を与えるかも知れないけれど、これらのことがコミカルにテンポよく展開するものだから、嫌味に感じることなく最後まで飽きることなく楽しむことができる。やっぱ、脚本がよくできてるんだと思う。
そして、周囲のドタバタぶり、あたふたする様子を眺めて、とりあえずはクビが繋がったことだけをよしとして、今までどおりの変わらない生活を送ると思ったら、その中でしっかりと自信を取り戻して地に足が着いていくピニョン。ラスト近く、彼が社長に「君は困った男だな〜。」と言われて、「私は今までは透明人間でした。だから、"困った男"というのは、私にとっては昇進に当たるんですよ。」なんていう下りには拍手を送りたくなったりして(笑)。それと、ラストの写真撮影のシーン、これがまたいい(「鎖骨が〜!」って、しっかりとネタを絡ませてるし(笑))。実はこういうダメ男にもしっかりエールを送ってるんだよね。
キャスト的にも、ピニョンを演じるダニエル・オートゥイユ以外にも、フランス映画界の有名どころ、ジェラール・ドパルデュー、ジャン・ロシュフォール、ミシェル・オーモン、ティエリー・レルミットまでもがクソ真面目にこういうコメディを演じてくれるんだから、楽しいったらありゃしない(笑)。今回は特にジェラール・ドパルデュー
の見事な変貌振りを賞賛したい。ゲイ嫌いのマッチョ男がああも変わるんだから、前半と後半のドパルデューは別人みたいだもん(笑)。彼の今までのイメージが完全に覆ったね(笑)。それと、「シリアル・ラヴァー」 のミシェル・ラロック がこれまたいいんだよな〜♪ラストのピニョンとの絡みのシーン、ここでも舞台がゴム工場というのが見事に活きている(爆)。間違いなく、今年のベスト10候補だね♪