シャンプー台のむこうに

 「乾かない夢の物語。」
 父フィルとふたりで理髪店を営むブライアンは、地元でヘアドレッサー選手権が開催されることを知る。カットの練習を重ねていたブライアンも出場の意欲をかきたてられるが、かつて全英一の美容師だった両親は、10年前のコンテストを切っ掛けに絶縁状態。父フィルも我関せずを決め込んでいた。そんなとき、ふたりの前に突然現れる母シェリー。ガンで余命いくばくもない彼女にとって、コンテスト出場は家族との絆を取り戻す、最後のチャンスだった。その願いを背に受けて、コンテストに挑戦するブライアン・・・。
 「フル・モンティ」 のサイモン・ボーフォイ脚本の、とびっきり"ブリティッシュ"な"涙と笑いの家族再生物語"だ。この一見地味に思われるヘアドレッサー選手権を通じて、10年間絶縁状態にあった家族の絆が取り戻される様が、それぞれの持つ心情の移り変わりなども絡めながら絶妙なタッチで描かれている。
 市長が大々的に選手権の開催を発表したときのプレスのシラケぶりとか、ブライアンが死体でヘアカットの練習をするところとか(その一方で、死んでも髪の毛は伸びるということに何だか切なさを覚えたのも事実)、クリスティーナの羊のカラーリングとか、所々笑わせてくれたうえに、最後にはしっかりホロリとさせてくれる。マジで泣きました、あたしは。しかも、最初は今イチ盛り上がらなかった選手権が、日を追うごとに盛り上がってきて、最後はまさにライヴみたいな感じで大盛り上がり大会になるのが相乗効果となって、後味スッキリのかなりの秀作。オマケに、フィルが10年前のコンテストのためにモデルのサンドラと準備していたことが今回の選手権に役立っちゃうっていうんだから、この辺の構成もニクイね〜♪大好きだな〜、こういう作品って。
 また、フィルを演じるアラン・リックマンが、またカッコいいんだ。過去の選手権連覇の栄光はどこへやら、今では単なる"負け犬"のフィルだけど(確かに選手権の直前に妻がモデルのサンドラと逃げたらそりゃ凹むわな〜)、妻のため、家族のために静かに気持ちを高ぶらせて立ち上がるその姿に、"男気"を感じてしまった。それから、フィルのライバル美容師、レイを演じるのビル・ナイもイイ味出してる。「スティル・クレイジー」「ラッキー・ブレイク」 とはまた一味違う、「あ、こういう美容師さんって間違いなくいるかも!」って思わせるようなあの怪しげな雰囲気(笑)、これがたまらない。そのほか、クリスティーナを演じるレイチェル・リー・クックも、彼女の出演作って初めて観たんだけど、お目目がクリクリしてて結構キュートだし、ブライアン演じるジョシュ・ハートネットも、今までは何となくくすぶっていて、自分の"道"が今ひとつ見えていなかったのだけれども、この選手権を通じて確かに自分の"道"みたいなものを発見して、成長する姿を好演しているのは間違いない。
 でも、チラシなどではジョシュ・ハートネットがあたかも主演みたいな扱いでフィーチャーされてるけど、主役はあくまでもアラン・リックマンとシェリーを演じるナターシャ・リチャードソン、そしてサンドラを演じるレイチェル・グリフィスの3人です、ハイ(笑)。なので、ある批評でジョシュ・ハートネットとレイチェル・リー・クックが活かされていないというのを読んだけど、彼らはあくまでも"脇役"なんだから、それでいいんじゃないの?って思ってしまった。

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