セッション9
「目醒めたのは誰だ?」
19世紀に建てられ、いまや巨大な廃墟となったダンバース精神病院。かつて2,400人を収容したゴシック様式の建物にはショック療法やロボトミーといった非人道的な治療を受けた患者たちの暗い記憶が澱んでいた。そこへ改修工事前のアスベスト(石綿)除去のために5人の男たちが訪れる。作業を進めるうちに、彼らのひとりが取り残された多重人格患者の診療テープを見つける。22年前のクリスマスイブに患者No.444に何が起こったのか?アスベストの粉塵のごとく、目に見えぬ恐怖に侵されていく男たち・・・。
実在した精神病院、ダンバース精神病院を舞台として繰り広げられるスリラー作品。とにかく怖いという前評判を聞いていたし、スプラッター的ではないスリラー映画が好きなもので、かなりの期待感を胸に劇場へ足を運んだ。
正直前半部分の登場人物の相関関係を描くくだりはやや退屈だったかなと。それと、多重人格患者の診療テープにしても、聴いているのはひとりだけで、あとの連中はその存在すら知らないというのがやや肩透かし(てっきり、この診療テープを中心にして物語が展開するものだと思っていたから)。しかし、中半以降、作業にあたるひとり、ハンクが行方不明になったあたりからどんどん面白さが加速していった。このハンクが逃げ出そうとして走る真っ暗な地下通路、そこに描き出される何かがいるんじゃないかと思わせる雰囲気、これが怖い。以前他のサイトでどなたかが"場所の恐怖"ということをおっしゃっていたのだけど、この作品に関してはまさしくその表現が当てはまる。地下通路だけでなく、病室も含めて、舞台となるダンバース精神病院、これこそが作品の主役を演じているとでも言えばいいのだろうか。実はあたしは訳あってこのような場所には多少の免疫があるものの、それでも怖いと感じただけに、免疫のまったくない人、ここで実際に行われたという数々の"治療"について予備知識も何もない人にとっては一層恐怖感を感じるのでは?
そして、ハンクが行方不明になった後の男たちの疑心暗鬼、徐々に心を蝕まれていくような感じ。後半での人間の持つ"心の闇"の部分が出現していく過程、これまたジワジワと効いてくる。今回完全に"壊れて"しまった彼は、もともとそのその傾向があったとはいえ、このような特異な状況下に置かれたことがそれに一層拍車をかけていたのではなかろうか?もしかしたら、この場所に封じ込められた患者たちの暗い記憶が彼に憑依してたりして・・・。そう考えるとゾクゾクする。