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蝶の舌

 「だから、「さよなら」のかわりに叫んだ。胸、引き裂かれる思いで。」
 舞台は1936年のスペイン、ガリシア地方の小さな村。少年モンチョと彼をやさしく包み込んでくれるグレゴリオ先生。先生はクラスを森へ連れ出し、そこでモンチョは大自然の驚異の世界へと導かれていく。先生が引退した後も夏休みに沢山森へ連れて行ってもらうと約束するモンチョであった。しかし、ファシズムの陰が忍び寄る内戦前夜のスペイン、楽しいはずの夏休みが一転、物語は悲劇的なクライマックスへ・・・。
 個人的にこの夏一番の注目作と思っていたのだが、その期待に違わぬ出来だった。モンチョとグレゴリオ先生との心温まる触れ合いをベースにして、そこにモンチョの兄のほのかな恋、モンチョ自身の初恋を絡ませつつ、自然の美しい映像が挿入される。
 これだけだったらほのぼのとした物語で終わるのだが、なんといっても舞台がスペイン内戦前夜。ところどころに不安定な時代の空気が漂っている。ラストではかつての"同志"が目の前で連行されるというのに何も出来ない(それどころか自己保身のために罵声を浴びせる)大人の弱さ、醜さが浮き彫りにされる。そして涙なしには観られないラストシーン。グレゴリオ先生へ今までの思いのたけを先生から教わった言葉にして叫ぶモンチョの姿に、胸が締め付けられるというか、引き裂かれそうになるというか。何もこんな時代に出会わなくてもいいのに、と痛々しい気持ちになる。今でもラストシーンを思い浮かべるとウルウルきちゃって。またひとつ忘れられない映画に出会った、そんな気持ちだ。

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