チョコレート
「たかが愛の、代用品。」
ハンクは、黒人嫌いの保守的な父親バックから偏見と州立刑務所の看守の仕事の両方を受け継いだ男である。息子のソニーも看守になったばかりだが、黒人の死刑囚マスグローヴの刑の執行の日、任務を満足にこなせず、そんなソニーに怒りを爆発させるハンク。だが翌日ソニーはハンクの目の前で命を断つ。悲しみに打ちひしがれた彼は退職し、新しい生活を始める決意をする。一方、マスグローヴの妻レティシアは、夫の死後、女手ひとつで育ててきた息子タイレルをも事故で失ってしまう。車に轢かれたタイレルを病院に運んでくれたのはハンクだった。やがてふたりは自分でも思いがけず、互いに惹かれるようになっていく。だが彼女は、ハンクが夫の刑を執行した男だとは知らなかった・・・。
決して派手ではないけれど、そこにいろんな感情が凝縮されていて、喪失の痛み、悲しみをお互いに埋めあって再生していく、ジワジワと効いてくる見事な余韻の残るラブ・ストーリーだ。この"再生"という点で、同じ喪失の痛み、悲しみをテーマとしながらも、「イン・ザ・ベッドルーム」 と正反対の結末が導き出されるのが興味深い(アカデミーの件もあるし、東京ではこの2作品、同時期に同じ映画館で上映されているものだから、どうしても比較しちゃって)。
まず、ハンクを演じるビリー・ボブ・ソーントンがいい。目の前で息子のソニー(誰かと思ったら、「ROCK YOU!」 のヒース・レジャーだった)に自殺され、そのことをきっかけとしてきっといろいろな内面の葛藤があったのだろうけど、徐々に彼自身も変わっていき、今までは差別意識に凝り固まって見向きもしなかったであろう黒人女性のレティシアに惹かれるところ、前半のいわば鉄面皮の彼が人間らしい表情を取り戻していく変化が素晴らしい。
それと、レティシアを演じるハル・ベリーも、まさしく体当たり的な演技を見せてくれる。人種差別や貧困など、諸々の困難に直面して、周りはみんな敵!みたいな彼女でも、心の中では「大切にされたい!」って思っていて、それがなんとも切ない。そして、特に素晴らしいのがラストのレティシアがすべてを知ってしまうパートと、それに続く満天の星空の下、ハンクと並んでチョコレート・アイスクリームを食べるエンディングでのあの表情・・・。あの短いシーンの中で、彼女の心の中に沢山の感情が渦巻いたんだよな〜って思うと、思わず溜息。この瞬間、あたしにとってこの作品はハル・ベリーの映画となりました(笑)。いや〜、このエンディングは最初に書いたとおり、ほろ苦く、ジワジワ効いてくる余韻の残る見事なエンディングだ。もっとも、甘いモノ食べられないあたしは、さすがにチョコレート・アイスクリームを食べたいとは思わなかったけど(笑)。それから、原題は「MONSTER'S BALL」 (死刑囚が最後の数字間を平穏に過ごせるようにという願いを込めて開かれるパーティーのことだそうだ)
だけど、今回はこの作品の内容を一言で見事に言い表した邦題に軍配を上げたい。