父よ
「息子を救ったのは、父の静かなる愛だった」
第2次大戦後、混乱の中にあったパリ。本当は息子のマニュに強い愛情を抱きながらも、長い間対立していた賭博師の父ジョー。息子は若さゆえの過ちから暗黒街に身を投じ、犯した罪以上の極刑(=死刑)を宣告されてしまう。迫りくる死刑執行を前に、確執を抱えた父と息子。だが父は、その確執を越えて息子の命を救うべく、、ひとり孤独な闘いを挑む。自分の思いを息子にはひた隠しにして―。
かつて筋金入りのギャングだったジョゼ・ジョバンニ監督の、自らの死刑宣告、そしてそこからの生還という体験を基にした父と息子の愛の物語。物語自体は淡々と展開するから多少かったるさを覚えるかも知れないし、ここで父が息子を救うために講じるなりふり構わない手段(ギャンブルで得た金で買収を試みたり、裏社会のコネまで利用するなど)には、おそらく賛否が分かれることだろう。しかし、それでも息子を思う父の気持ち(寡黙なんだけど、きっとその内側には"熱い"思いが迸っていたんじゃなかろうか?そしてこの寡黙な父を演じるブリュノ・クレメールがまた素晴らしい!)というのが痛いほどに伝わってきて、素直に感動し、父の思いを息子が理解するラストでは思わず泣けてきた。きっとジョゼ・ジョバンニ監督は、この作品を通して彼の父親への感謝の気持ちを表現したかったんだろうね。
大体にして、父と息子の関係って非常に微妙なところがあって、なかなかお互い素直に気持ちを伝え合うことって難しいんだよね。あたしもうちの父親との関係を思い起こすといろいろと思うところがあるんだけどさ。モチロン今では父親のことを尊敬というか、理解できてると思える部分も大きいけど、やっぱ昔はそうじゃなかったもん。何かにつけて反目し合って、家の中で会話なんてなかったし。でも、そんな関係が多少変わったのはあたしが家を出て、しばらく経った21のときの"あること"がきっかけだったと思ってる。あのことがなかったら、もしかしたら今ではもっともっと疎遠な関係になってたかも知れないし、理解なんてできないまま終わってたかも知れない。そういう意味では、あの経験も決して無駄ではなかったってこと。って、余談はさておき(笑)、きっと自分の父親との関係について、色々と思うところ、考えさせられることがあると思うから、是非多くの男性映画ファンに観てもらいたい作品だ。
そして、この作品は、ジャック・ベッケル監督の手によって映画化された、ジョゼ・ジョバンニ監督が原作・脚本を手がけている「穴」 誕生までの物語でもあるということで、一日も早く「穴」 を観たい!そんな気持ちにもさせられた。