トラフィック
「闘わなければ、呑み込まれる。」
舞台はメキシコ、オハイオ、そしてサンディエゴ。この3つのエリアで繰り広げられる麻薬に関するストーリー。メキシコでは麻薬カルテル同士の暗闘に巻き込まれるメキシコ州警察のハビエール・ロドリゲス、オハイオではオハイオ州最高裁判事から大統領命令によって麻薬取締連邦最高責任者に任命されたロバート・ウェークフィールドとその家族、サンディエゴではメキシコの麻薬カルテルと通じる"麻薬王"の夫が逮捕されて以後、彼の事業を引き継ぐことで否応なく巨大なうねりの中へ呑み込まれていくヘレーナ・アラヤと、彼女を監視するDEA捜査官の姿が描かれる。それぞれのストーリーはほんの僅かに交錯するだけで、それぞれのラストへと向かっていく・・・。
派手さはない抑えたハリウッドらしくない作りながらも、2時間半という長さをまったく感じさせることのない構成、ソダーバーグ監督侮りがたしだ。私はかなり気に入った。しかも、それぞれのエピソードもスクリーン上でしっかり色分けされているから、後半特に場所の説明がなくても今はどこのシーンなのか識別できて、別に混乱することもなかったし。特にメキシコ編のセピア色といっていいのかな、あの画面の色合いがなんともいえずGoodだった。
もっとも、完全無欠のヒーローが登場するわけでもないし、映画に単純明快な分かりやすさを求める人には、あの構成だと、明確な結論が導き出されないエンディングも含めてツライかも。やっぱり終映後、私の周りでも「よく分かんな〜い。」という声が聞こえたし。確かに好き嫌い分かれるというか、観客を選ぶ作品だと思うよ。でも、明確じゃなくとも、それぞれのストーリーにはそれなりの肯定的な含みを持たせたエンディングが用意されているわけだから、私はあれでよかったと思う。
私が一番印象に残ったのは、メキシコ編のラストシーン。約束どおりナイター設備が完備されて(プールでの会話はここへ到る伏線だったのね)、公園で野球をする子供たち、そしてそれを見つめるハビエールのあの表情。別に感動したわけじゃないのに、なぜかジワ〜っときちゃって、余韻にひたったまま、しばらく席を立つのが惜しい気がした。私的には抑えた演技の中に男の色気を感じさせるデル・トロに、主演男優賞を差し上げたい。