容疑者

 「殺人犯の指紋が、息子と一致した。」
 NY市警察殺人課・敏腕刑事ヴィンセント・ラマーカ。新たな殺人事件を担当したヴィンセントは、その容疑者が離婚した妻との間にできた実の息子ジョーイであると知らされる。そんな中、事件を追っていたヴィンセントのパートナー、レッジが殺されてしまう。容疑者はまたしてもジョーイだ。警察は、警察殺しを絶対に許さない。窮地に追い込まれる中、ヴィンセントはジョーイから「俺は殺していない、信じてくれ。」との電話を受ける。刑事として追うべきなのか、父親として追うのか・・・。ヴィンセントは、自らの命をさらしながらも真実を追い求めていく・・・。
 ピュリツァー賞を受賞した報道ジャーナリスト、マイケル・マッカラリーが綴った実話を基にしたサスペンス・ドラマという触れ込みのこの作品、しかも、ロバート・デ・ニーロとフランシス・マクドーマンドの共演ってことになれば、こりゃ観なきゃいかんでしょ!と、意気揚揚と劇場へ(ホントは試写会当たってたのに、都合で行けなかったし)。
 主役が敏腕刑事、そして殺人事件の容疑者が幼い頃に置き去りにしたヤク中の息子。しかも事件の起きた街は自分の生まれ故郷で、そこには自身の封印したい過去―実の父親が殺人犯として処刑された―が眠っていて・・・。父であること、そして刑事であることで葛藤し、しかも事件をきっかけとして自分の過去まで明るみになり、"殺人者の血"などと騒がれる刑事が、はたして真実を掴み息子との絆を取り戻せるのかというテーマは非常に興味深いし、これが実話に基づいているということにも驚かされる。
 しかし、そんな興味深いテーマとは裏腹に、人物描写が薄っぺらで深みがないから、こちらに伝わってくるものがない。まあ、確かにジョーイを演じるジェームズ・フランコの幼い頃に自分を捨てた父親に対する愛憎入り混じる気持ちの表現、それとヤク中の自暴自棄ぶりの演技に関してはなかなかのものがあると感じられる。しかし、肝心のデ・ニーロの演技が抑え目で上手いのは間違いないのだが、息子を信じる気持ちと、一方刑事として容疑者を追わなければならない立場との葛藤が伝わってこず、本来なら感動モノになってもおかしくないラストのふたりの絡みも特にこれといった山場もなく過ぎていってしまうというのが惜しいところ。俳優の演技が上手くても感じるものがない。これは演出の仕方に難があるということなのだろうか?
 それから、フランシス・マクドーマンドが演じるヴィンセントの恋人ミッシェルの描き方まで中途半端で、彼女もある意味この事件に巻き込まれた(事件のおかげでヴィンセントとの仲に亀裂が入った)とも言えるわけで、そんな彼女に関するフォローのエピソードすら描かれていない、すなわち、ヴィンセントとジョーイのエピソードを描こうとしたあまり、彼女が途中で放り出されてしまったように感じられるというのも非常に気にいらない(スンマセン、彼女のファンなもんで)。なので、ラストが明るい未来を感じられるような終わり方になっていても、なんだか取って付けたような感じがして、すっきりしないというのが正直な気持ちだ。 

や〜わの目次へ   INDEX