レジェンド・オブ・メキシコ
「愛だけが、ただひとつの正義だった。」
たったひとりで、ふたつ町を始末した男。そして、悪名高き将軍、マルケスの女を奪った男。情報屋ベリーニは、酒場で"伝説の男"について語っていた。語る相手は、CIA捜査官サンズ。彼は、腕利きの殺し屋を捜していた。そしてベリーニが紹介するガンマンこそが、伝説の男"エル・マリアッチ"だ。
現在はマルケス将軍に壮絶な報復を受け、失意のままに殺し屋家業を引退したマリアッチ。マリアッチに会ったサンズは、こう語る。「クーデター未遂がある。マルケス将軍が、大統領を殺す。でも、マルケスに権力は握らせない。奴が大統領を殺した後に、マルケスを殺せ」「腕の良すぎるコックは、殺す。俺はそうやって、国のバランスを保つ。大統領も一緒だ」と。マリアッチは、依頼を受けた。報酬のためではない。ずっと胸に秘めていた、復讐のためだ。カロリーナと子供のために・・・。
「パルプ・フィクション」 同様、あたしの人生を変えたロバート・ロドリゲス監督の「エル・マリアッチ」。この作品は、その「エル・マリアッチ」、「デスペラード」 に連なる"マリアッチ3部作"の最終章を飾るに相応しい、幾らメジャーになって、作品のプロダクションが大きくなろうとも、相変わらずロバート・ロドリゲス監督が好き勝手にやる、ロドリゲス・ファンのため"だけ"の、ついて来れる奴だけついて来い的な、彼の本質がまったく変わっていないということが嬉しい、ロドリゲス魂炸裂の熱い作品に仕上がっている。そういう意味では、かなり強引な例えになるかもしれないが、お互いを"ブラザー"と呼び合うクエンティン・タランティーノ監督の「KILL BILL Vol.1」 のような位置付けの作品と言ってもいいだろう(両作品とも、エンド・クレジットのThanks
Listの筆頭にお互いの名前をクレジットしているところがなんとも)。
まずはオープニングの酒場のシーン。「デスペラード」 ではスティーヴ・ブシェーミがチーチ・マリンに語った"伝説"を、今度はチーチ・マリンがジョニー・デップに語るところからニヤリとさせられる(「デスペラード」 でチーチ・マリンは死んでいるけど、他のキャラとなって登場)。オマケに、その"伝説"の中ではマリアッチがエレキ・ギターを武器にしてるし。火を噴くエレキ・ギター。う〜ん、ロックだ(謎笑)。それと、サルマ・ハエック演じるカロリーナが投げるナイフが、これまた「デスペラード」 でダニー・トレホが使用していたナイフだし(笑)。あと、マリアッチの回想シーンでの、マリアッチとカロリーナがホテルからワイヤー伝わってバスに飛び乗るシーンなんて、間違いなく「エル・マリアッチ」 からの引用だろうし。他にも「デスペラード」 同様、教会での懺悔部屋っつうんですか、あそこのシーンとか(しかしまあ、銃撃シーンの最中、スタコラと何事もなかったように教会を後にするオバアちゃまがなんともイカしてる(笑))、こういうファンのオタク心をくすぐるシーンで完全に掴みはOK。あとはもう、"ロドリゲス・ワールド"に身を委ねるだけ。
ちなみに、3部作といっても、今回はマルケス将軍の女だったというカロリーナ(「デスペラード」 ではブチョの女)の位置付けなど微妙に違っていたりして(カロリーナを演じるサルマ・ハエックの出番が回想シーンの中だけというのが唯一の不満だ。まあ、復讐の物語ということで、物語の性質上仕方ないし、こういう重要なキャラまでもあっさりと殺っちゃうのがロバート・ロドリゲス監督の持ち味というのは間違いないんだけどね)、パラレル・ワールドのような、完全なる続編というわけではなかったりするのだが、そんな細かいことはどうでもよく、豪快なガンファイトと爆破シーン、思い切り吹っ飛ぶ悪者たちにラテン・フレイバー溢れる音楽などが相変わらず心地よい。それと、スケボーと化すギター・ケースに、火を噴くギター・ケースやラジコン式のギター・ケース爆弾なんていう、「デスペラード」 におけるマシンガン内臓ギター・ケース&ロケットランチャー内臓ギター・ケースと同様の、遊び心満載の小道具も楽しい。
まあ、確かにクーデター、麻薬王、FBIにCIAなんかも飛び出して、話がどんどん大きくなっていく割には内容が散漫、なんて声も聞こえてきそうだけど、最初にも書いたとおり、これはロドリゲス監督が好き勝手にやっただけの作品なわけで、重厚な内容など求めちゃいけません(爆)。
それにしても、今回も思い切り"濃い"メンツが顔を揃えたよな〜。ダニー・トレホ(濃い顔のアップもあるし、その割にはあっさり殺られちゃうのがらしい感じ(笑)。そういや、パンフレットの人物相関図における、彼が演じるキャラクター、ククイの紹介文の"職業:ダニー・トレホ"の一文に大爆笑)&チーチ・マリン(ジョニー・デップに撃たれた挙句、ケツの穴に指を突っ込まれる最期が哀しい(爆))のロドリゲス作品常連組はモチロンのこと、なんともエキセントリックなんだか冷酷なんだかよく分からん麻薬王バリーリョを演じるウィレム・デフォーの妙な存在感は相変わらずだし(物語の最初の方で、ある男性を屋敷に呼んで満悦だったのは、「生まれ変わる。」ということへの伏線だったのね)、組織を抜け出したいのに抜け出せない、心優しき悪党ビリー・チェンバースを演じるミッキー・ロークの心の葛藤がなんとも上手いし(常にチワワを抱いている姿がなんか可愛い(笑))、バリーリョに相棒を殺されて、サンズの依頼で敗者復活戦とばかりにこの戦いの渦の中へ身を投げ出していく元FBI捜査官ラミレスを演じるルーベン・ブラデスのいぶし銀の存在感もなかなかのもの。
それと、CIA捜査官サンズを演じるジョニー・デップ。物語の狂言回しとしての役回りをしっかりと演じている。クーデターに乗じて私服を肥やそうとする、良心の欠片すら見当たらない悪役なんだけど、完全なる悪という感じでもなく、妙に憎めないチンピラぶりがさすがだ。バリーリョの策略にはまって両目を抉られた後の、血の涙を流した状態で銃を撃つシーンはカッコよかったな〜。また、義手とか、コントのような変装用の付け髭(笑)、C.I.A.とプリントされたTシャツ(パンフレットによると、このプリントの下には"Cleavage
Inspection Agency"なる文字が・・・(爆))など、小道具にも抜かりがない。こんな役を演じられるのは、やっぱり彼を置いて他にいない。あと、ピビルなる料理も一度食べてみたい。でも、美味すぎるからといって、コックを撃ち殺すようなまねはしないけど(笑)。
しかし、これらの一癖もふた癖もある共演陣を差し置いて、やはり主役を張るのはマリアッチを演じるアントニオ・バンデラス(一部の宣伝で、"ジョニデ最新作"なんていう言われ方をしていたが、決してそんなことはなく、ジョニデはあくまでもゲスト扱いに過ぎないのだ)。台詞は決して多くはないものの、愛する妻と娘を奪われて復讐に燃える、そして祖国メキシコをクーデターから守ろうとする哀愁のガンマン、マリアッチを、ギュ〜っと凝縮させた濃縮還元120%といった趣で静かな炎を燃やすがごとく、クールに熱く演じている。ラストでメキシコ国旗を身体に纏って颯爽と歩くその姿に、こみ上げてくるものを押さえきれずに目頭が熱くなった。
「KILL BILL Vol.1」 を観たときと同じように、この作品を観ても泣きそうになってしまうおバカなあたしだけど(爆)、"マリアッチ3部作"、そしてロバート・ロドリゲス監督のファンでよかったと心から思ったのでありました。