約束
70歳の長期入院患者ベランは、次第に薄れていく過去の記憶を失うまいと懸命に奮闘していた。一方、小児ガンで入院中の10歳の少年マーティは、じっとしていられずいつも病院内で騒ぎを起こしている。そんなある日、忍び込んだ高齢者病棟でベランと出会うマーティ。最初は通わなかった心が徐々に通い始め、やがてふたりの間に"友情"が芽生えていく・・・。
2002年の劇場初鑑賞作品は、なかなかの秀作。アルツハイマーの老人と小児ガンの少年の、なんとも心温まる交流を描きながら、しっかり感動させつつ、泣かせるというよりもなんだか気持ちがポカポカしてくるような、そんな作品だった。
ベランのキャラクター設定というのが、話すことができないというもので、彼の言葉はすべて彼の心の中で発せられるものなんだけど、彼が心の中でつく悪態がなんとも可笑しく、そんな彼が徐々にマーティに心を開いていく様子がまたいい。とはいえ、話すことができず、身体も満足に動かせない彼の、マーティとの唯一のコミュニケーション手段は"目"。その"目"の表情がマーティとの交流が深まるにつれ変わっていくように見て取れたのは気のせいだろうか。いやきっとそんなことはない。ベランを演じるミシェル・セローの演技力の賜物なんじゃないかな。
それから、マーティを演じるジョナサン・ドゥマルジェの愛くるしさ。小児ガンという重い病気を背負っていながらも、決して明るさを失うことなく病院内で暴れまわるその姿、なんだかギュッて抱きしめてあげたいくらいだ。想像力も逞しく、ベランのことを"カッコいいスパイ"に仕立て上げちゃうんだからね〜(笑)。
このふたりの交流が微笑ましく、実際の病院生活においてはこんなことってありえないのかもしれないけれど、"目"でコンタクトしながら、間違いなくふたりの間に"友情"が芽生えていくというのが感じられて、こんな"友情"もありだよな〜と、つくづく思ったのでありました。
マーティがベランを外へ連れ出して、かつての"スパイ仲間(笑)"の元へ連れて行き、そして海辺で迎えるラストシーン、ベランの心の叫びはそれだけを聞いているととても悲しいものなんだけど、それが悲劇的な印象を与えることなく穏やかな余韻が残る作品だった。きっといずれ訪れる彼らの"未来"を暗示するような終わり方ではなかったからなんだろうね。