リメンバー・ミー
「会うことも見ることも出来ない。けれど、すぐそばで親しさと暖かい息づかいをお互いに感じ合えるなら、それは愛なのでしょうか。
」
学生運動が激化する1979年のソウル。女子大生のソウンは、ひょんなことから壊れた無線機を貰うことになる。そして皆既月食の夜、無線機から突然男の声が聞こえてくる。それはなんと2000年に暮らす大学生のインの声。不思議な思いに捉われながらも21年の時を超えて交信を続け、いつしか心を通わせていくふたりだったが・・・。
時を超えて交信する男女、ということになれば、嫌が応にも「イルマーレ」 を思い出す(あと、"時を超えての交信"ということで、「オーロラの彼方に」 も引き合いに出されるようだが、こちらは未見なので悪しからず)。「イルマーレ」 が手紙でのやり取りだったのに対し、こちらはハム無線機でのやり取りという、同じくアナログな手段がらもより直接的。そして皆既月食の夜に交信が始まるということで、一層ファンタジックな雰囲気が醸し出される。
また、1979年というのが韓国にとって激動の時代だったことを象徴するように、"夜間通行禁止"や"戒厳令"、"大統領の暗殺"などという、同じ1979年でも平和ボケした日本では考えられないような言葉も飛び出してくる。この、実際の史実に基づいた事象が出てくることで、単なるファンタジーとは違うという印象も与えられる。それと、2000年の韓国についてソウンがインに真っ先に「統一は?」と尋ねるなど、やはりこの問題がいつの時代にも注目の的になっているんだと考えずにはいられない。
それはさておきストーリーの本筋に目を戻すと、時を超えて交信を続け、次第に心を通わせていく生きる時代も価値観も全く違うふたりに微笑ましさを覚えると共に、お互いに対する思いやりの気持ちが感じられ、この相手を思いやる気持ちというのはいつの時代にも変わらないもの、変わらずにいて欲しいものだと思ってしまう。特に密かに憧れる先輩のトンヒに対する気持ちを素直に語れないソウンに対し、インが「この無線が君の日記だ。話す日記帳。」なんて言うシーン、好きだな〜。
しかし、ただ単にホノボノ話で終わったら面白くない。ソウンが未来を知ってしまうことで話は急展開。ソウンとインの関係が明らかにされ、ここから切なさが一気に強まっていく。誰しも自分の未来は知りたいようで知りたくない。でも、ひょんなことから知ってしまってそれが自分の望む未来とは違っていた場合、その時間の流れに抗うことができるのだろうか・・・?しかもこの場合、ソウンが自力で未来を変えてしまったら当然インの存在自体に影響を与えることが明らかなわけで。結局ソウンは時間の流れに抗わないことを選択し、憧れの先輩トンヒ(「シュリ」 で"落下傘"などと揶揄されていた彼と同一人物だとは思えない)の顔に右手を当てて心から彼の存在を消そうと決心するシーンには、なんとも胸が締め付けられる思いがして観ていて辛かった。でも、それがソウンの選んだ道だし、きっと間違っていなかったということは、ラストで彼女が見せるあの微笑みに表されていると思いたい。なんとも印象に残るラストシーンだ。
このソウンを演じるキム・ハヌルの存在感がまたいい。きっと自由な恋愛すら禁じられていた1979年という時代の中にあって、一途に先輩に思いを寄せる清楚な女子大生の揺れる心を見事に演じている。前述の相手を思いやる気持ちだけでなく、人を想う気持ちというのも時代が変わっても変わらないもの、変わらずにいて欲しいものだ。個人的な趣味としては、いかにも現代っ子のヒョンジを演じるハ・ジウォンの方がタイプだったりするけどね(笑)。
また、インを演じるユ・ジテ(あたし的には琴光喜なんだけど、"高橋克典+ラッシャー板前"という声もあり)も、現代っ子ながらソウンとの交信と通じて彼女と彼の両親が過ごした青春時代に目を向け、そこからまた一歩成長していく雰囲気が感じられ、かなりの好演だ。
「イルマーレ」 のように交信する男女のラブ・ストーリーではないけれど(でも、インはソウンに惚れてたのかな?)、切なさ、甘酸っぱさ、微笑ましさ、そして爽やかさが感じられる、これもひとつの優れたラブ・ストーリーの形だと思うよ。あと、ラストで大学の守衛が言う「歳月の流れは壊せないものだ。」というセリフ、これがまた印象的。