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ロック・スター

 「一夜明けたら、カリスマ」
 クリス・コールはHR界のカリスマ・バンド、STEEL DRAGON に憧れ、彼らのカヴァー・バンドBLOOD POLLUTION でプレイを続ける毎日。しかし、バンド・メンバーとの意見の相違でバンドを追い出されてしまう。そんなある日、失意の彼のもとにかかってきた1本の電話。それは、あのSTEEL DRAGON のリーダーでギタリストのカークからのものだった。「ロスに歌いに来ないか・・・?」かくしてクリスはSTEEL DRAGON のニュー・ヴォーカリスト"イジー"として迎えられ、彼の"ロック・スター"としての人生が始まる・・・。
 あの事件の影響でシュワちゃんの新作が公開無期延期となった代替作として、日本では2週間の期間限定で公開されたこの作品、当初はJUDAS PRIEST のティム"リッパー"オーウェンズの話に基づいたものであるとの触れ込みで製作が開始されたにも関わらず、その後諸々の事情で「JUDAS PRIEST ともティム"リッパー"オーウェンズとも全く関係がない。」とJUDAS PRIEST 側及び映画制作会社から発表されるにいたって、何だかきな臭い雰囲気が感じられた。そんな内輪話は置いておくにしても、全く無名のカヴァー・バンドのヴォーカリストがビデオを観たメンバーにオーディションに呼ばれ、オーディションで1曲歌っただけで超一流のバンドのヴォーカリストに迎えられるとか、前任のヴォーカリストがゲイだとか、作品中に出てくる雑誌名が「METAL GOD」 だとか(当初、映画のタイトルも「METAL GOD」 と呼ばれていたらしい)、いかにもJUDAS PRIEST を思い起こさせるネタが満載なのも事実だ。ま、STEEL DRAGON の音楽性はJUDAS PRIEST とは全然違うし、ここで描かれているのはあくまでも80年代のアメリカのHRバンド(L.A.メタル的なバンドね。ちなみにJUDAS PRIEST はイギリスのバンド)の姿だから、ライフ・スタイルとかもJUDAS PRIEST とはかけ離れているけどね。それを考えると、JUDAS PRIEST 側がこの作品と距離を置きたくなった気持ちも分かるような気がする。
 いずれにしても、派手で華やかなアリーナ・ショウとか、ドラッグ、アルコール、グルーピー、ハチャメチャなツアー生活(ホテルの部屋をメチャクチャにしたり、窓からTVを投げ落としたり)など、良くも悪くも80年代のHR/HMが煌びやかだったあの時代を思い出させるのは間違いないところ。その他、クリスにカークから電話がかかってきたときのやり取りや、バンド加入後の記者会見の模様、ラストでクリスがSTEEL DRAGON を脱退した後のバンド・メンバーの言い草など、HR/HMファンには笑えるシーンも多くある。
 それと、いい年して(^^)、未だにバンドなんぞやっているクリスに対する両親の暖かい眼差し、これがいい。そうなんだよね〜、アメリカってすべてではないにしろ、子供がやってることをこうやって家族が応援してくれるところがポイント高し。日本ではきっとこうはいかない。「いい加減、髪切ってマトモな(なんだよ、マトモって?)仕事に就きなさい。」って言われるのがオチ。
 それから、もうひとつの目玉は、お馴染みのミュージシャン達がバンド・メンバーとして出演していること。ジェイソン・ボーナムにザック・ワイルド(しっかりビール持ってます(^^))、ジェフ・ピルソンにブラス・エリアスまで。ジェイソン・ボーナムは結構セリフもあるし、ライヴ・シーンではザック・ワイルドの弾きまくりが楽しめる。考えようによっては、大スクリーンで彼らの演技を観られるというだけでも一見の価値があるかもしれない。そして、実際にSTEEL DRAGON の楽曲を歌っているのは主演のマーク・ウォルバーグではなく、元STEELHEART のマイク・マティアヴィッチとジェフ・スコット・ソート。
 ちなみに、バンドのマネージャー、マッツ役(これがいい味出してるんだ。"ちょっと小便をしてくる"というエピソードは笑った)で「スティル・クレイジー」 にドラマー役で出ていたティモシー・スポールが、STEEL DRAGON の前任のヴォーカリスト、ボビー役でガイ・リッチー作品でお馴染みのジェイソン・フレミングが出演しているなど、分かる人には分かるキャスティングにもニヤリとさせられる。そして、クリスのガールフレンド、エミリー役のジェニファー・アニストン、彼女がまたいい。あのキュートな魅力、たまらんな〜(^^)。彼女みたいなのが才能と成功を信じてくれたら、そりゃ〜、頑張ろうって気にもなるわな。
 ただ、「スティル・クレイジー」「あの頃ペニー・レインと」 が、溢れんばかりのロックとロック・ミュージシャンに対する愛情が感じられ、「そうそう、だからロックが好きなんだよ。ロックが好きでホントによかった〜。」と心から思える作品だったのとは違い、この作品は「そういえば、あの時代はこうだったよね〜。やっぱあの頃はよかった。」というような、いわゆる単なるノスタルジーで終わってしまうのが惜しいところ。作品中で使われるロック・チューンも、のっけから流れる"Long Live Rock 'N' Roll"や、BON JOVIモトリーLEPS(でも、"Let's Get Rocked"は90年代の曲だぞ)、AC/DCKISS など、お馴染みの名曲揃いの割りには、もう少し効果的な使われ方があったんじゃないかな。そういや、"カーマは気まぐれ"や"Relax"なんかも流れてたっけ。
 それと、あのラストはどうなんだろ?バンドとしてのイメージを保つため曲作りにも参加できず、ただ与えられた曲を歌うだけ、結局そんな"ロック・スター"としての生活は虚栄に過ぎないと気付き、最後は自分を取り戻して元の生活に戻るクリス、この作品を"青春映画"として捉えた場合、ドラマとしては"爽やか〜"って感じで後味はいいいんだけど、あの時代を実体験して、人一倍思い入れのある立場から言わせてもらうと、ロックの世界って実際にはもっとドロドロしてるし、語弊があるかもしれないけれど、キレイ過ぎる終わり方だ(愛情が感じられればこんな些細なことは気にならなかったんだろうけど)。しかも、彼が脱退後に演っている音楽を考えると(別にこの系統の音楽を批判しているのではないです。あたしはあ〜ゆ〜のも好きなので、年のため)、なんか"メタルは終わった"とでも言わんばかりな感じがする(これって被害妄想?ま、確かにそのとおりなんだけどさ)。いずれにしても、製作者側の意図がハッキリと伝わってこず、なんとも中途半端な気持ちが残った。こんな小難しいことを考えず、お馴染みのナンバーとミュージシャン達の出演を単純に楽しむのが健康的でいいのかな?

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