笑う蛙
「夫は妻を、永遠に抱きたいと思った。
妻は夫に、一度だけ抱かれたいと思った。」
倉沢逸平は、かつてはエリート銀行員だった。しかし、借金の穴埋めに顧客の預金を横領して逃亡、失踪。一方、あとに残された逸平の妻の涼子は、世間の目から逃れるために実家の別荘へと移り住む。そして、逃亡生活に疲れた逸平が隠れ家にと思いついたのがこの別荘。そこで涼子と鉢合わせしてしまう。自首を勧める涼子と逃亡を続けたい逸平、そこで涼子から意外な提案。それは、一週間匿うので、出て行くときに離婚届に判を押せというもの。かくして逸平は、別荘の納戸の住人となるのだが・・・。
藤田宜永の「虜」 を原作とし、原作では納戸に開いた節穴から逸平が覗くさまざまなもの(涼子とその現在の恋人吉住との濡れ場(古ぅ)など)に感じる欲情、興奮と、逸平に覗かれていることを知りながら自らの欲望に抗いきれない涼子の姿をメインにエロティックな雰囲気満載に描いていたものを、そのような要素はあくまでも作品を構成する要素のひとつとして、よりテンポのいいコミカルな要素をメインに新しい作品に作り変えたといってもいいなかなかの秀作だ。そういやこれも舞台がこの別荘の中だけという、ある意味限られた空間の中での密室劇といってもいいのかも。
まずは逸平を演じる主演の長塚京三がいい。もともとTVドラマでその演技力は実証済みではあるが、ここでも逃亡生活に疲れたやや情けない中年男性を悲哀感たっぷりに面白おかしく演じてくれる(のっけの風呂場からの別荘への侵入シーンなどは、完全にコメディだ)。原作のテイストを変えるという前提のもとに彼を主役に配したのであれば、その時点でこの作品の成功は約束されたといってもいいだろう。また、涼子を演じる大塚寧々も、原作には名前しか出てこない元愛人の南果歩演じるバーのママとの掛け合いや、これまた原作とは異なるラストでのセリフ回しなど、なんともホンワカした独特の雰囲気で相変わらずの存在感(でも、ベッド・シーンはもっと大胆にやってね。せっかくなんだから(笑))。
このふたりを軸として、涼子の現在の恋人吉住や涼子の家族を巻き込んでのある種のドタバタぶりは、原作支持派には許せないところがあるかも知れないけれど、コメディ(?)としての脚本がしっかりしているんだから、まったくの別モノとしてとらえてもいいいんじゃないの?あたしはラストも含めて原作よりもこっちの方が断然好き(エロティックなものよりもコメディ好きなもんで)。その他、國村隼、雪村いずみ、ミッキー・カーチスなどの共演陣も楽しいし(どうでもいいけど、吉住の娘役の彼女って、「金八先生」 の学級委員の娘だよね?)、エンディング・テーマの泉谷しげるの"春夏秋冬"がこれまたマッチしてるんだよね〜♪